下肢静脈瘤とは
・ | 足の血管がぼこぼこ浮き上がり、だるい、かゆい、むくむ方。 |
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・ | 長い間下肢の皮膚炎や潰瘍(皮膚が破れている)が治らない方。 |
・ | ゴルフや長時間の立ち仕事により頻回こむら返りが起こる方。 |
➡ 下肢静脈瘤が原因かもしれません。
下肢静脈瘤とは下肢の表面の静脈が、太くなり蛇行した状態になったり、こぶのように膨らみ浮き出して見える病気です。
はじめは膝下の静脈から目立つようになります。
最初は見た目が変わって見えるだけですが次第に痛みや、脚がだるい、つる、むくむ、疲れやすいなどの症状が出てきます。
更には皮膚がかゆくなったり黒ずんでくるといった症状が現れます。
もっとひどくなると皮膚がただれて潰瘍を形成し治りにくい状態になります。美容的な悩みの原因にもなります。重い症状が出る前に、まずはお気軽にご相談ください。
津さくらばしクリニックでは三重大学で下肢静脈レーザー治療を開始し、その後三重県下で初めて健康保険承認1470nmレーザー焼灼術を導入した経験豊富な心臓血管外科専門医の下野院長が最新のレーザー器機による日帰り手術を行います。
下肢静脈瘤の治療例
下肢静脈瘤はできる血管により4タイプに分類されます。
受診される方の74.5%は、伏在型または側枝型の伏在静脈瘤と言われています。
なお、当院では蜘蛛の巣状静脈瘤の治療は行なっておりません。
網目状や蜘蛛の巣状では先天素因やホルモンの影響等が原因と考えられていますが、はっきりした発症のメカニズムは不明です。一方伏在型や側枝型では発症原因により一次性と二次性に分けられています。
以下最も治療対象として多い伏在型、側枝型の静脈瘤について説明していきます。
伏在型、側枝型の静脈瘤の発生原因を知るには下肢(足)からどのように血液が心臓にもどっているかを理解する必要があります。
動脈は心臓というポンプから血液が送りだされ、血圧という圧で血液が流れています。しかし静脈ではそのような圧は血液にはかかっていません。
足が心臓より高い位置にあれば自然に血液が心臓に戻っていきますが、立った状態では下肢から血液が心臓にもどるには、下肢から重力に逆らって血液が上がって行かなければなりません。
なぜ血液は心臓にもどるのでしょうか?
① | 呼吸、右房圧減少による吸引 |
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② | 流入する動脈血の押し上げ |
③ | 下肢の高さの変化 |
④ | 下肢の筋収縮による筋ポンプ作用 |
⑤ | 静脈弁にある逆流防止弁 |
などが説明されていますが特に④と⑤が重要です。
静脈内の血液を心臓に戻すためには、筋肉ポンプと逆流防止弁の働きが重要だと考えられています。足の筋肉が収縮すると筋肉内の静脈洞と呼ばれる静脈の袋が押しつぶされ血液が深部静脈に押し込まれます。この深部静脈に押し込まれた血液は逆流防止弁の働きで心臓に向かい帰っていきます(図1〜3)。
そして、その血液の逆流を防ぐために逆流防止弁が備わっています(図4)。
しかし何らかの原因でこの弁が壊れると、表在静脈に血液が逆流し圧が上昇します。そして流入していた枝や本幹がふくれ静脈瘤ができます。
このように逆流防止弁が壊れておこる静脈瘤を一次性の静脈瘤といいます。
また深部静脈が閉塞したり、生まれつき動脈と直接交通しているために深部静脈の圧が上がり、次いで表在静脈の圧が上がったため静脈瘤ができた場合を二次性の静脈瘤と呼びます。
【発生頻度】
一次性静脈瘤の発生頻度についての全国規模での疫学調査はなされていませんが、報告によると15歳以上の方では43.4%に下肢静脈瘤がみられたと報告されています。
またべつの報告では60歳代の方は60%、70歳代の方は70%に下肢静脈瘤が発症しているとも言われています。
下肢静脈瘤の治療法
保存的治療法
現在の症状を悪化させないように、弾性ストッキング(図5)という圧力の強い靴下をはいていただきます。これをはくことによって、表在の静脈への血液の逆流を防止し、深部の静脈への血液の流入をスムーズにして、足のむくみやはれをふせぎます。特別な指示がない限り睡眠時はぬいで、下肢をやや挙上していただきますが、昼間は基本的に着用していただきます。
ただし、静脈瘤を悪くさせないことはできますが原則として静脈瘤を直すことはできません。
【日常生活での注意】
・長時間の立位や座位を避ける
・弾性ストッキングを履く
・就寝時には下肢を拳上する
・局所的に下肢を締め付けない
・正座は避ける
・徹底したスキンケアを行う
中圧 30-40mmHg/術後の血腫形成防止硬化療法後・リンパ浮腫等
低圧 20-30mmHg軽度静脈瘤・静脈瘤の予防
手術治療法
当院では以下に説明するストリッピング手術、レーザー焼灼術、高位結紮術、硬化療法などがおこなわれています。
下肢静脈の超音波検査を施行し病状を把握したあと、患者さま一人一人に最も適した治療法を提示させていただき、患者様の要望を踏まえ治療方法を決定いたします。
(津さくらばしクリニックでは静脈造影検査やCT検査は行いません。)
病状の進んだ静脈瘤の患者さまにおこなう治療です。手術は軽い全身麻酔または静脈麻酔と局所浸潤麻酔を併用しておこないます。
静脈瘤の原因となっている大伏在静脈を足の付け根から膝下または足首の部分までぬく手術です。足のつけねと膝下、足首の皮膚を切開し、ストリッパーという専用の器具を静脈内に挿入して血管を引きぬきます。血管が蛇行していたり、血栓ができている場合など器具がうまく通らない時は追加の切開をおこなうこともあります。
小伏在静脈に対しても行います。
(図6)
大伏在静脈瘤に対するストリッパー挿入後の模式図
(図7)
SFJ部での大伏在静脈の切断端処理
(図8)
大腿部にストリッパー挿入
最近急速に広まりつつある治療法で、欧米では広く普及しています。日本では2011年1月に保険適応が認められたばかりのため保険診療下では三重県では未だ6施設でしか行われていません。
静脈麻酔または軽い全身麻酔と局所浸潤麻酔で治療をおこないます。津さくらばしクリニックでは局所浸潤麻酔に軽い静脈麻酔を併用し患者さまのストレスをへらしています。
目的の血管を穿刺し、中にカテーテルを通し、そのカテーテルからレーザー光を放出して逆流のある血管を内腔から焼いて閉塞させる治療です。場合によっては1cm程度皮膚を切開することもありますが、ほとんどの方では皮膚を切る必要がありません。
ストリッピング手術より低侵襲で、同様の効果が得られますが、あまり太い血管や蛇行した血管、膝下から足首の大伏在静脈は治療することができません。
5mm程度の小切開によりストリッピング術やレーザー焼灼術のみでは残存する静脈瘤を切除する方法です。大変小さい傷ですので、ケロイド体質でなければ縫う必要もなく傷跡もほとんどわからなくなります。
レ-ザ-焼灼術と組み合わせると傷跡がほとんど残りませんので美容上大変有利です。
(図12)フックで瘤を引き出す
(図13)モスキート鉗子で瘤を摘出する
おもに一部の網の目状静脈瘤、ストリッピング後の遺残静脈瘤、高位結紮術と併用しておこないます。静脈瘤の中に硬化剤(ポリドカノール)を泡状にして注射し、血管に炎症を起こし圧迫することによって閉塞させる治療法です。
効果が不安定なため再発率が高く、何度も治療が必要な場合もありますが、治療は注射を打つだけなので外来で反復治療が可能です。